「嫁ちゃん、ごめんな、俺はもう気持ちが続かんよ。もういいよ。お互い自由になろう。俺はもう無理だよ」いつもは冗談ばかりでお調子者っぽい兄が別人のように見えた。

ようやくひと段落ついた修羅場。

ある日の夕食、同居の兄嫁が妊娠したと発表、
同時にその種が夫(兄)ではないと爆弾投下した。
全員絶句した。

その日は話し合いにならず次の日、兄嫁両親も召喚して話し合いになった。
兄嫁親が家に到着すると兄嫁が「こんな大げさにしなくったって」と言い出した。
大げさとかじゃないだろうと兄嫁親が叱り、そこから先は私は別室待機した。

けれど、妊娠は兄嫁の狂言だった。

その頃は兄の仕事が忙しく真夜中帰宅が多かった。
うちの両親も自営で繁忙期、私もちょうど仕事が立て込んでた。
それでさびしかったから妊娠したと言って気を惹きたかったらしかった。
妊娠だけじゃインパクトが少ないって思ったのと兄嫁は言い訳してた。
他の男と浮気するかもという危機感を煽れば
夫が早く帰宅してデートしてくれると思ったんだそうだ。

自営を手伝わせてもらえないし
お手伝いもさせてもらえなくてさみしかったと何度も言ってた。
でも 絶対自営は手伝わせない、完全二世帯でお互いの家には入らない、
家事は兄夫婦世帯の分のみしか
兄嫁にはさせないというのが兄嫁本人と兄嫁親の強い希望だった。
なのに小姑ちゃん(私)は兄夫婦世帯に遊びに来てくれない、
お茶に呼んでくれない、何もお願いしてもらえないと嘆く兄嫁。

実際には他の男の子供は
身ごもってなかったんだから許してやってほしいと
兄嫁親は頭下げてたけど、兄の中で何かぷっつり切れたらしい。

激昂することもなく悪口も言うこともなく、
「嫁ちゃん、ごめんな、俺はもう気持ちが続かんよ。
他のことならいくらでも頑張るけど、
好きとかの気持ちばっかりは頑張り方が分からんよ。もういいよ。
お互い自由になろう。嫁ちゃんも嫁ちゃんの気持ちを満足させてくれる相手を
自由に探せるようになったほうがいいだろ。
俺はもう無理だよ」

いつもは冗談ばかりでお調子者っぽい兄が別人のように見えた。
キャーとかキーみたいな声で兄嫁が絶叫してて、
その目の前の兄は正座で淡々としてた。

他の男の子供をと聞いてもういいやという気持ちに兄はなったそうだ。
普通に仲の良さそうな新婚夫婦に見えてたんだが、
いろいろあったんかなって気がするが兄は何も言わなかった。

兄嫁はずっと、
ああしてほしかったこうしてほしかったと兄の至らない点をずっと言ってた。
でも、そんなにいやなら離婚でいいじゃないかと言われると嫌だとずっと泣いてた。
でも泣きながら結婚生活の不満を言い続けた。
とうとう兄嫁親も「お前はどうしたいんだ?」と怒り、離婚になった。

兄嫁は嫁イビリされても耐える覚悟で嫁いできたんだそうだ。
なのに嫁イビリどころか皆ずっと家の外で話す暇もない。
好きの反対は無視なんだよって兄嫁は泣いて訴えてたけど、
ちゃんとあいさつはしてたし、
無視じゃなくて忙しかっただけだと言っても納得しなかった。

来月あたりにはひと段落つくよって話したはずなんだけど、
それまで待てないんだそうだ。
身の潔白を晴らして兄の気持ちを取り戻す宣言してたけど、
浮気してない証明なんてどうするんだろう?
仕事も落ちつき兄も独身に戻った。

「愛のコメント」

夫婦というのはなかなか難しいものですね。